閉鎖循環下骨盤内非均衡灌流療法 NIPP

骨盤内がん治療に新たな選択肢

NIPPとは

NIPP(=Negative-balance Isolated
Pelvic Perfusion)は
血流をコントロールすることで
高濃度の抗がん剤を
がんのある部位に
限定して届ける治療法です。
患部以外の正常な組織への影響を
低く抑えながら
薬剤の効果を
高めることが出来ます。
投与後、抗がん剤は回収されるため、
身体への負担が軽減されます。

NIPPの対象疾患

骨盤内の3つのがんに適応

NIPP治療の6つの特徴

  • 高濃度かつ
    大量の
    抗がん剤を局所投与

    シスプラチン(CDDP)などの抗がん剤を超高濃度で骨盤内に投与できます。
    通常の全身化学療法と比べ、腫瘍部位の薬剤濃度が15〜25倍以上に達することが報告されています​。これにより、腫瘍に対する効果が高まり、治療効果の向上が期待できます。

    ※引用元:文献1 NIPP-Ann Surg Oncol

    ※引用元:文献1 NIPP-Ann Surg Oncol

  • 副作用を軽減できる
    可能性があります

    抗がん剤の副作用は、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を与えることによって生じます。
    NIPPの場合、カテーテルを通して局所に薬剤を投与するため、抗がん剤の全身漏出を抑えられ、腎障害や骨髄抑制などの副作用が軽減されるため、高齢者や併存疾患のある患者でも適応しやすい治療法です。特に、腎機能の低下・脱毛については大きく負担を軽減できます。

    副作用の例

    • 消化器系(吐き気や下痢など)
    • 血液・免疫系(白血球や赤血球の減少など)
    • 皮膚・毛髪への影響(脱毛や皮膚の乾燥、かゆみなど)
    • 神経・筋肉系の影響(しびれ、筋肉の痛みなど)
    • 心臓・肝臓・腎臓(心不全や黄疸、むくみなど)
    • 強い倦怠感、発熱など
  • 身体への負担が少なく
    治療後の回復が早い

    カテーテルという直径3-4mmほどの細い管を用いるため、傷口が小さく、身体への負担が少ないのも特長です。外科手術のように大きな傷が残らないため、スムーズな社会復帰が期待できます。

  • 治療に要する
    期間が短い

    NIPPは治療の効率性にも優れています。通常、手術を含めて5日間で退院でき、約1ヶ月の間隔をおいて2回の治療で完了します。長期の入院を必要とせず、頻繁な通院も不要です。患者さんの時間的負担も軽減しながら、短期間での治療効果が期待できます。

  • 化学療法や放射線治療後

    再発例にも効果を発揮

    従来の化学療法や放射線療法で効果がなかった症例でも、NIPPによる局所制御が治療効果が期待できます。
    子宮頸がんの再発症例では、患者の57.7%でがんが完全に消えたか、または大幅に縮小する効果が確認されました。

    ※引用元:文献1 NIPP-Ann Surg Oncol

  • 進行がんでも
    QOLを維持

    直腸癌の患者では、痛みが大幅に軽減し、生活の質(QOL)が著明に改善したという報告がされています。

NIPPの適応患者

骨盤内の進行がんや、従来の治療(化学療法や放射線治療)で不応とされた方が該当します。

  • 基本条件

    • 主要臓器機能(腎機能・骨髄機能・心機能)が保たれている
    • 遠隔転移がないまたは局所治療の価値がある
    • 患者さま本人が局所療法(手術回避、QOL重視)
      を希望している
  • 適応となる疾患

    • 再発、難治性の子宮頸がん
    • 再発、難治性の子宮体がん
    • 子宮体がん、子宮頸がんで子宮全摘を避けたい方
    • 浸潤性膀胱がん、局所進行性膀胱がん
    • 再発、難治性の局所進行性直腸がん
    • 手術適応直腸がんで人工肛門手術を避けたい方
  • 不適応となるケース

  • 報告されている
    NIPPの副作用

    • 軽微な副作用(CTCAE 2以下)

      • 吐き気(73.1〜78.3%)
      • 嘔吐(42.3%)
      • 食欲不振(57.7〜60.9%)
      • 全身倦怠感(61.5%)
      • 神経障害(13.0〜30.7%)
      • 発熱(21.7〜26.1%)
      • 白血球減少症(8.6〜11.5%)
      • 低カリウム血症(4.3%)
      • 血腫形成(19.2%)
    • 重篤な副作用(CTCAE 3以上)

      • 神経障害(足のしびれ感)(7.6~8.6%)
      • 白血球減少症(7.6~8.7%)

これまで10年以上の歴史があるNIPP治療。以下のように、がんに対して高い治療効果を示しています。

子宮頸がん再発、骨盤骨への浸潤が認められた患者

4週間間隔で2回のNIPPが行われた。術後のCTは初回NIPPの7週間後。
腫瘍の縮小と骨盤骨の再生が認められた。

  • 副作用:足のしびれ感が認められた

※費用については、自由診療のため病院により異なり、論文内で非公表となっております。一般的な費用についてはQ1をご参照ください

直腸がん術後再発(放射線治療は未実施)

NIPPを2回実施(シスプラチン量170mg/㎡)。初回NIPPから1.5ヶ月後のCT。
痛みの改善が得られた。

  • 副作用:軽微な足のしびれ感がみられた

※費用については、自由診療のため病院により異なり、論文内で非公表となっております。一般的な費用についてはQ1をご参照ください

NIPP臨床試験結果

副作用を抑えつつ高い治療効果を示し、膀胱温存や生存率の向上が確認されました。

子宮頸がんの
臨床試験結果

対象

再発または難治性の子宮頸がん患者26名(プラチナ系抗がん剤・放射線治療歴あり)

結果

直腸がんの
臨床試験結果

対象

手術ができない、進行した直腸がんの患者23人(女性11人、男性12人)、平均年齢は58歳。

結果

膀胱がんの
臨床試験結果

対象

進行性膀胱がんの患者10名(男性7名、女性3名)、平均年齢64.4歳(範囲:52~76歳)。

結果

NIPP治療の流れ

NIPPは最低1ヶ月の間隔をあけて、2回の治療で完了します。
退院後、定期検診を経て腫瘍の様子を診ていきます。

短期間で治療完了

入院期間は5日間

1ヶ月程度の間隔を空ける

NIPPは最低1ヶ月の間隔をあけて、通常2回の治療で完了します。

学会発表実績・文献紹介

NIPP療法は専門誌に掲載され、学会でも継続的に発表されている治療法です。

国内学会発表実績

2020年 日本IVR学会総会(神戸)

シンポジウム3:「動注化学療法 re-visit」

難治性子宮頸がんに対する閉鎖循環下非均衡灌流療法の有用性 帝京大学千葉総合医療センター 村田智

閉鎖循環下骨盤内非均衡灌流療法(NIPP)ワーキンググループ活動状況報告 市立奈良病院 穴井洋

2021年 日本IVR学会総会(オンライン開催)

シンポジウム6:灌流療法(NIPP)の実際と医師主導治験に向けて

がん潅流療法の保険医療化に向けた開発戦路について 日本医科大学 松山琴音

NIPP手技詳細と注意点 杏林大学病院 小野澤志郎

NIPP適応疾患とNIPP変法について 帝京大学ちば総合医療センター 村田智

NIPP-今後の見通し 市立奈良病院 穴井洋

2022年 日本IVR学会総会(神戸)

シンポジウム5:NIPP臨床試験に向けて

がん灌流療法の実用化に向けた開発戦路と臨床試験計画  日本医科大学 松山琴音

NIPPの治療方法 杏林大学病院 小野澤志郎

新規医療機材を用いた閉鎖循環下骨盤内非均衡灌流療法 帝京大学ちば総合医療センター 村田智

NIPP-現状と今後の見通し 市立奈良病院 穴井洋

2023年 日本IVR学会総会(高知)

シンポジウム4:NIPP臨床試験に向けて

NIPP適応と手技の実際 杏林大学病院 小野澤志郎

臨床試験概要 日本医科大学 松山琴音

NIPP臨床試験の予定 市立奈良病院 穴井洋

2024年 日本IVR学会総会(和歌山)

シンポジウム2:灌流療法の現在

NIPP臨床試験の実施に向けて 日本医科大学 松山琴音

NIPP実施に向けて 杏林大学病院 小野澤志郎

JSIR2024 NIPP WG 現状と展望 市立奈良病院 穴井洋

文献紹介

子宮頸がん

  • ※文献1

Murata S, Onozawa S, Sugihara F, Sakamoto A, Ueda T, Yamaguchi H, Yasui D, Mine T, Kumita S. Feasibility and Safety of Negative-Balance Isolated Pelvic Perfusion in Patients with Pretreated Recurrent or Persistent Uterine Cervical Cancer. Ann Surg Oncol. 2015 Nov;22(12):3981-9. doi: 10.1245/s10434-015-4494-3. PubMed PMID: 25758191. IF: 3.655

※文献1

Murata S, Onozawa S, Sugihara F, Sakamoto A, Ueda T, Yamaguchi H, Yasui D, Mine T, Kumita S. Feasibility and Safety of Negative-Balance Isolated Pelvic Perfusion in Patients with Pretreated Recurrent or Persistent Uterine Cervical Cancer. Ann Surg Oncol. 2015 Nov;22(12):3981-9. doi: 10.1245/s10434-015-4494-3. PubMed PMID: 25758191. IF: 3.655

直腸がん

  • ※文献2

Murata S, Onozawa S, Kim C, Tajima H, Kimata R, Uchida E, Kumita S. Negative-balance isolated pelvic perfusion in patients with incurable symptomatic rectal cancer: results and drug dose correlation to adverse events. Acta Radiol. 2014 Sep;55(7):793-801.

※文献2

Murata S, Onozawa S, Kim C, Tajima H, Kimata R, Uchida E, Kumita S. Negative-balance isolated pelvic perfusion in patients with incurable symptomatic rectal cancer: results and drug dose correlation to adverse events. Acta Radiol. 2014 Sep;55(7):793-801.

膀胱がん

  • ※文献3

Kimata R, Kondo Y, Nemoto K, Murata S, Kumazaki T. The negative-balance isolated pelvic perfusion method using ultrahigh-dose cisplatin for invasive bladder cancer with poor risk. Int J Clin Oncol. 2010 Oct;15(5):433-9.

※文献3

Kimata R, Kondo Y, Nemoto K, Murata S, Kumazaki T. The negative-balance isolated pelvic perfusion method using ultrahigh-dose cisplatin for invasive bladder cancer with poor risk. Int J Clin Oncol. 2010 Oct;15(5):433-9.

麻酔関連

  • ※文献4

Nakazato K, Kim C, Terajima K, Murata S, Fujitani H, Nakanishi K, Tajima H, Kumazaki T, Sakamoto A. Large volume loading to prevent cisplatin-induced nephrotoxicity during negative-balance isolated pelvic perfusion. J Cancer Res Clin Oncol. 2007 Oct;133(10):741-7.

※文献4

Nakazato K, Kim C, Terajima K, Murata S, Fujitani H, Nakanishi K, Tajima H, Kumazaki T, Sakamoto A. Large volume loading to prevent cisplatin-induced nephrotoxicity during negative-balance isolated pelvic perfusion. J Cancer Res Clin Oncol. 2007 Oct;133(10):741-7.

基礎実験

  • ※文献5

Murata S, Onozawa S, Oda T, Mine T, Ueda T, Kumita S, Nomura K. Pharmacologic advantages of negative-balance isolated pelvic perfusion: achievement of intensive exposure of the pelvis to platinum without systemic leakage.Radiology. 2012 Feb;262(2):503-10.

※文献5

Murata S, Onozawa S, Oda T, Mine T, Ueda T, Kumita S, Nomura K. Pharmacologic advantages of negative-balance isolated pelvic perfusion: achievement of intensive exposure of the pelvis to platinum without systemic leakage.Radiology. 2012 Feb;262(2):503-10.

  • ※文献6

Murata S, Tajima H, Abe Y, Onozawa S, Uchiyama F, Hayashi H, Kimata R, Nomura K. Changes in pelvic and systemic platinum concentrations during negative-balance isolated pelvic perfusion: correlation between platinum concentration and method of administration in a pig model. J Cancer Res Clin Oncol. 2007 Jul;133(7):417-22. PubMed PMID: 17245596.IF: 3.141

※文献6

Murata S, Tajima H, Abe Y, Onozawa S, Uchiyama F, Hayashi H, Kimata R, Nomura K. Changes in pelvic and systemic platinum concentrations during negative-balance isolated pelvic perfusion: correlation between platinum concentration and method of administration in a pig model. J Cancer Res Clin Oncol. 2007 Jul;133(7):417-22. PubMed PMID: 17245596.IF: 3.141

  • ※文献7

Murata S, Tajima H, Kusakai G, Kumazaki T, Abe Y, Onozawa S, Komada Y, Kondo Y, Kimata R, Himeno S, Satake M. Reduction of drug leakage by negative-balance isolated pelvic perfusion: correlation between leakage and in-out flow rate in a pig model. J Cancer Res Clin Oncol. 2005 Sep;131(9):575-80. PubMed PMID:15895252. IF: 3.141

※文献7

Murata S, Tajima H, Kusakai G, Kumazaki T, Abe Y, Onozawa S, Komada Y, Kondo Y, Kimata R, Himeno S, Satake M. Reduction of drug leakage by negative-balance isolated pelvic perfusion: correlation between leakage and in-out flow rate in a pig model. J Cancer Res Clin Oncol. 2005 Sep;131(9):575-80. PubMed PMID:15895252. IF: 3.141

よくある質問

Q1.
NIPPの治療費はどのくらいかかりますか?
A.

NIPPは自費治療となり、1度(通常2回の治療)でおおよそ400万円から500万円程度の費用がかかることが予想されます。治療費は患者様ごとに異なりますので、治療を受ける病院に御確認ください。また、通常は、1回目の治療から1ヶ月の間隔をあけて2回目の治療を行う事が多いです。

Q2.
NIPP治療は痛いですか?
A.

NIPP自体は全身麻酔下に行われるため、基本的に治療中に痛みを感じることはありません。しかし、治療後には軽度の下腹部の違和感や圧迫感を感じることがあるかもしれません。これは一時的なもので、通常は数日以内に軽減します。なお、治療に用いる抗がん剤によって副作用が異なりますので、副作用をご参照ください。

Q3.
NIPPはどこで受けられますか?
A.

NIPPは現在自費治療であり、実施している施設には限りがあります。治療をご希望の患者様、説明を聞きたい患者様は本ホームページからお問い合わせを御願い致します。

Q4.
問い合わせから治療までどれくらいの時間がかかりますか?
A.

実施施設によって異なりますが、治療の順番待ちがない状況で、画像や診断の最新情報が十分に提供されていれば、1~2ヶ月程度で治療可能と考えられます。希望される患者さんが多い場合には待ち時間は長くなる可能性があります。

Q5.
NIPPを受けた後に再発する可能性はありますか?
A.

がんの進行度や患者さんの状態によって再発リスクは異なります。

Q6.
NIPP治療を受けた後、どれくらいで日常生活に戻れますか?
A.

治療後の回復期間は個人差がありますが、多くの患者さんは退院後 1週間程度で術前と同じ日常生活に戻ることができます。激しい運動や重労働は数週間避けることが推奨されます。また、治療後しばらくは定期的なフォローアップが必要になります。

Q7.
副作用はありますか?
A.

NIPP特有の副作用として、過去には足のしびれ感が報告されています。一般的な抗がん剤の副作用としては、 軽度の腎機能障害、血液数値の変化(白血球減少など)、一時的な倦怠感、聴神経障害などが報告されています。

Q8.
NIPPはどんな人が受けられますか?
A.

NIPPは、 膀胱がん、直腸がん、子宮頸がん などの進行がんに対して、標準治療が難しい場合や、手術を避けたい場合に適用されることがあります。ただし、心機能が著しく低下している場合や、全身状態が極めて悪い場合は適応外となることがあります。

Q9.
NIPPと通常の化学療法・手術の違いは?
A.

一般的な化学療法、NIPP,手術の違いは以下の通りです。
・一般的な化学療法:抗がん剤が全身のがんに届きます。遠隔転移のある場合や手術可能な範囲を超えて広がっている場合に選択されます。
・NIPP: 骨盤内に限定して高濃度の抗がん剤を投与するため、骨盤内の腫瘍への高い効果が期待でき、副作用が比較的少ない傾向があります。手術では取り切れない局所進行がんの患者さんでも実施することが出来ます。
・手術(外科的切除):病変を手術で取り切れる場合には根治を目指せますが、病気の広がりによっては手術が出来ない事もあります。術後の合併症や生活の質(QOL)への影響が報告されています。
NIPPは 「手術を避けたいが、化学療法単独では効果不十分な場合」、「手術は出来ないが、骨盤内に病変がとどまっているが場合」、「全身に広がっていても、病変の大部分が骨盤内にある場合」などで選択されます。

Q10.
NIPPは何回受ける必要がありますか?
A.

がんの進行度や患者さんの状態によりますが、通常は2回の治療が必要となります。1~2ヶ月程度の間隔を開けることで、1回目の治療の時に効果の少なかったがん細胞に対する治療を行うことが出来るためです。一方で痛み止めや緩和的治療を希望する患者さん、1回の治療で効果が十分な場合などでは、2回目の治療を行わない事もあります。場合により3回目以降の治療も可能です。

Q11.
治療後の経過観察はどうなりますか?
A.

NIPP治療後、約2週間で血液検査を行います。白血球減少症(治療の副作用により白血球などが減ってしまい細菌など対する抵抗性が落ちてしまっている状態)などの副作用がある場合には治療が必要となります。画像検査は初回NIPP後、1~2ヶ月、その後は3~6か月ごとの画像検査(CT/MRI)や血液検査を行い、がんの状況を確認します。場合によってはPET-CTなどによる経過観察も行われます。膀胱がんの場合は膀胱鏡検査も推奨されます。

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